【CAFC / 2020年07月28日】No. 2019-1956 - Fall Line Patents, LLC v. Unified Patents, LLC:IPRにおける実質的利害関係人(RPI)決定に対する職務執行命令(Mandamus)の否定および任命条項違反に基づく差戻し判決
1. 事案の概要(事実経過・請求内容)
特許権者であるFall Line Patents, LLC(以下「Fall Line」)が保有する米国特許第9,454,748号(以下「'748特許」)に対し、Unified Patents, LLC(以下「Unified」)は当事者系レビュー(IPR)を請求した。Unifiedは第三者に代わって特許無効化を図るビジネスモデルを採用していたが、IPR請求書(Petition)において会員企業等を「実質的利害関係人(Real Party-in-Interest: RPI)」として記載しなかった。
Fall Lineは、Unifiedによる35 U.S.C. § 312(a)(2)に基づくRPIの開示が不十分であるとして異議を唱えたが、米国特許商標庁(USPTO)の特許審判審判所(PTAB)は開始決定および最終書面決定(Final Written Decision: FWD)において、当該異議は時期に遅れたものであり、かつ証拠不十分であるとして棄却し、'748特許の対象請求項(16–19, 21–22)を新規性・進歩性欠如(§ 103)により特許不可(無効)と判断した。
Fall LineはCAFCへ控訴し、以下を主張した。
- PTABのRPI認定(§ 312(a)(2))は誤りであり、*Thryv*判決および*ESIP Series 2*判決により通常の上訴が制限されるとしても、CAFCは「職務執行命令(Mandamus)管轄権」に基づきPTABの不当な判断(shenanigans)を審理・破棄すべきである。
- PTABの行政特許審判官(APJ)の任用構造は合衆国憲法任命条項(Appointments Clause)に違反しており、*Arthrex*判決が提示した分離救済(Severance Remedy)は不十分であるため、PTABの決定は破棄かつ却下(Dismiss)されるべきである。
2. 判決の主文
PTABの最終書面決定(Final Written Decision)を破棄(Vacate)し、合衆国憲法上正当に任命された新たなAPJ合議体による再審理のためにPTABへ差し戻す(Remand)。
3. 主な争点
- 争点1: 35 U.S.C. § 314(d)により通常の上訴が禁止されるPTABのRPI認定(§ 312(a)(2))に対し、職務執行命令(Mandamus)管轄権に基づく司法審査が可能か。
- 争点2: *Arthrex*先例が定立した任命条項違反に対する分離救済(APJの解雇制限の修正)の妥当性、および控訴人が任命条項違反に基づく差戻し請求権を放棄(Waive)したか否か。
4. 裁判所の判断ロジック(判示の要旨)
1. RPI認定に対する職務執行命令(Mandamus)管轄の否定(争点1について)
- 最高裁の*Thryv*判決および当裁判所の*ESIP Series 2*判決に基づき、§ 312(a)(2)に基づくRPI要件の適否に関するPTABの判断は、§ 314(d)の適用を受け、司法審査が遮断(preclude)される。
- Fall Lineは*Cuozzo*判決の傍論を引いてPTABの不正行為(shenanigans)に対しMandamusを行使すべきと主張するが、Mandamusは「議会によって明確に控訴が禁止されている手続を迂回するための代替手段」として利用することはできない(*In re Power Integrations*)。
- 本件のRPIに関する主張は、通常の事実認定および条文適用に関する不服に過ぎず、憲法上または管轄権上の重大な違法を伴う「極めて異例な事態(extraordinary case)」には該当しない。したがって、Mandamus管轄権の行使を拒絶する。
- 当裁判所のパネルは、大法廷(en banc)決定または最高裁判決がない限り、過去のパネルによる先例(*Arthrex*判決)に拘束される(Prior Panel Rule)。*Arthrex*で定立された「APJに対する法的な解雇制限規定を一部分離(severance)することで憲法上の瑕疵を是正する」という救済手法の正当性を本パネルが再考することはできない。
- 一方で、被控訴人(Unified)は「Fall Lineが事前の差戻し協議を拒否したため権利を放棄(waive)した」と主張するが、当時の状況(RPI主張による完全勝利の可能性を優先した点)を考慮すると、適時(Opening Brief)に任命条項違反を主張したFall Lineが差戻し請求権を放棄したとは認められない。
- したがって、*Arthrex*の定立した法的枠組みに従い、FWDを破棄し、憲法上是正された新たなAPJパネルによるIPR再審理のためにPTABへ差し戻す。
5. 実務上・判例上の法的なポイント
- IPR開始要件(RPI等)に対するMandamus迂回主張の遮断: *Thryv*判決以降、IPR開始要件(§ 315(b)の期間制限や§ 312(a)(2)のRPI開示義務)に関するPTABの判断は直接上訴が不能となった。本判決は、この上訴不可の結論を「Mandamus(職務執行命令)」という形式的な訴訟形態に置き換えて回避しようとする実務上の試みを明確に否定した点に意義がある。
- RPI審査におけるPTABの裁量と責務(Footnote 1): 裁判所は脚注1において、RPI判断が司法審査の対象外であるからこそ、特許無効化ビジネス(訴訟回避や第三者の代理)を営む事業者(Unified等)がペティショナーとなる案件において、PTAB自身がRPIの正確性を慎重かつ批判的に審査(critical assessment)することが極めて重要であると付言している。実務上、PTAB段階でのRPIに関する立証・防衛の重要性が一層高まる。
- 巡回区裁判所における先例拘束原則(Prior Panel Rule)の徹底: *Arthrex*判決における救済方法(Severance)に対する当事者の異議に対し、CAFCのパネル裁判所は先例拘束の原則を厳格に適用し、大法廷または最高裁以外での判断変更を拒絶した。当事者が控訴申立初期(Opening Brief)で任命条項異議を保持していれば、訴訟手続上の交渉過程で一時的に差戻しに応じなかったとしても、*Arthrex*に基づく破棄・差戻し(Vacate and Remand)の権利は失われない。
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